麹菌ってなんだろう?

麹菌ってなんだろう?

麹菌ってなんだろう?

#豆知識

米麹 米糀

麹菌(コウジカビ)は「日本の国菌」

実は、麹菌(コウジカビ)は「日本の国菌」とされています。

日本酒や味噌、醤油、焼酎、漬物など日本の伝統発酵食品を支えている麹菌。
乳酸菌よりも目立たないかもしれませんが、これら日本固有の食文化を支えてきた「とても大事な菌」なんです。

なんで麹菌を使うの?ヒミツは酵素にあり!

なぜ、麹菌は有用微生物(※)なのか?ヒミツは、麹菌の持っている「酵素」にあります。
※有用微生物とは自然界にいる微生物の中で、有機物の発酵、動植物の細胞を活性化する働きを持つ酵素や生成物を作り出す微生物。乳酸菌や納豆菌。

麹菌は、デンプンをブドウ糖に分解する「アミラーゼ」や「グルコシダーゼ」、タンパク質をアミノ酸に分解する「プロテアーゼ」などの酵素を豊富に持っています。
食品製造では、麹菌を米や麦、大豆などの穀物に繁殖させて「麹」を作ります。ここで麹菌をたくさん繁殖させることで、麹菌の持っている酵素もたくさん作らせるのです。

例えば「米糀」

米麹 米糀

米の表面や割れ目にびっしりと麹菌が生えていて菌糸を伸ばしています。
この米糀を糖化(発酵)させると「甘酒」になります。酵素がお米のデンプンをブドウ糖に分解し、甘味を引き出してくれるのです。

ちなみに、この甘酒。よく誤解されがちですが、麹菌は生きていません。
なぜなら、糖化(発酵)は酵素が働く最適温度(約60℃)で行うため、麹菌自体は生き抜くことができず、ほとんど死んでしまうからです。
「麹菌が死なない低温で糖化(発酵)させれば良いのでは?」と思うかもしれませんが、低い温度では麹菌だけで無く不要な雑菌や食中毒菌も増殖してしまうため、「腐敗」する危険があります。

逆に65℃を超えると、酵素の活性がなくなって糖化(発酵)できなくなってしまうため、腐敗させずに酵素だけしっかり働かせる温度管理はとても重要になります。

日本の発酵食品に欠かせない麹菌たち
泡盛造りに適したアスペルギルス・アワモリ!?

実は、麹菌は約200種類いると言われています。
しかも、湿度を好むため東アジア圏にしか棲息していないんだとか。

その中でも、日本の発酵食品に欠かせない麹菌たちをご紹介します。

アスペルギルス・オリゼー

和名は「ニホンコウジカビ」。日本酒や味噌、醤油の製造に広く用いられ、「黄麹菌」とも呼ばれます。
近縁のアスペルギルス・フラバスの突然変異体を家畜化したと考えられています。

アスペルギルス・ソーエ

和名は「ショウユコウジカビ」。オリゼーの近縁で、こちらも「黄麹菌」と呼ばれます。
タンパク質分解酵素をたくさん作る株が多く、濃厚な醤油や味噌を製造する際などに使われます。

ちなみに、たまり醤油や豆味噌製造に適した麹菌として「アスペルギルス・タマリ」という種もあります。

アスペルギルス・カワチ

河内源一郎が発見した麹菌で「白麹菌」とも呼ばれます。
他の麹菌と違ってクエン酸を作り出す能力が高く、雑菌による麹の腐敗を防ぐことができます。そのため、気温が高い地域での酒造りに適しており、焼酎造りに使われます。

ちなみに、泡盛造りに適した麹菌として「アスペルギルス・アワモリ(黒麹菌)」という種もあります。

アスペルギルス・グルカス

鰹節づくりに使われる麹菌で、単に「カツオブシ菌」とも呼ばれます。
他の麹菌と違って、水分が少なくても増えることができ、タンパク質や脂肪を分解して独特の旨味と芳香を出します。

菌株も使い分ける

微生物の面白いところは、菌種が同じでも「菌株」によって少しずつ性質が異なるところです!
同じ乳酸菌でもご飯がススムキムチに配合されている「ピーネ乳酸菌」や乳酸菌飲料やヨーグルト商品でよく聞く「○○株」は特徴がそれぞれ異なります。

色の違い

例えば、アスペルギルス・オリゼー。この菌種で造った米麹のほとんどは、黄色っぽくなったり、灰色になります。
しかし、突然変異を応用した改良株として、麹が真っ白になる「白色菌株」も存在します。この菌株を使えば、米麹やその米麹から作った甘酒の色を明るい白色に保つことができ、見栄えが良くなります。

酵素の種類や量の違い

株によって作る酵素の種類や量も違うため、作りたい麹に合った麹菌を選ぶ必要があります。

例えば、味噌造り。「旨味」が重要なポイントになるため、タンパク質分解酵素を作る麹菌が好まれます。
反対に日本酒造りでは、アミノ酸が「雑味」になってしまうので、デンプン分解酵素に特化した麹菌がよく用いられています。

現場では、いくつかの種類の麹菌を独自にブレンドしていることもあります。

いかがだったでしょうか。麹菌の世界も奥深いものでしょう?
私たちは麹菌から一つ一つ確かめて開発を進めています。
ぜひ、そんな小さな「こだわり」も感じながら、美味しく楽しんでいただけましたら幸いです。