発酵について

知っているようで実は知らない「発酵」について詳しくご紹介します!

  • 発酵とは?

    発酵とは、微生物のはたらきで食物が人にとって有益な状態に変化すること。
    発酵することで、食べ物が美味しくなったり、長期間の保存が可能になったり、栄養価が増したりなど、様々な良い変化がおこります。
    例えば、ゆでた大豆と納豆の栄養成分を比べると、納豆のほうがビタミンB2は7倍、葉酸は3倍、ビタミンKはなんと85倍も多く含まれています。また、大豆を原料として作られる醤油や味噌は、大豆よりも旨味が強く、何年間も保存することが可能な食品です。このように「発酵」という微生物のはたらきによって私たちは多くの恩恵を受けています。

    発酵とは?
  • 発酵と腐敗って何が違うの?

    発酵と腐敗の違いは、「人間の見方」で決まります。
    美味しくなっていたり、栄養が増したりなど人間にとってよい状態に変化すれば「発酵」。まずい、臭い、食べるとお腹を壊したりと、人間にとってわるい状態に変化すると「腐敗」になります。
    しかし、何を「人間にとってよい状態」と考えるかは多種多様です。国や文化が異なれば、日本では当たり前の発酵食品も腐敗した食べ物とみなされることもあります。

    発酵に関わる酵素とは?
  • 発酵に関わる酵素とは?

    19世紀に、ドイツのエドゥアルト・ブフナーという生化学者が「酵母が死んでも、酵素ははたらくことが出来る」ことを明らかにし、酵素が発酵のメカニズムに関わることを突き止めました。
    微生物や人の体内にいる酵素は「消化酵素」や「代謝酵素」に分けられ、食物の栄養を分解して消化や吸収を助ける役割を担っています。例えば、甘酒などに使用される糀菌からは、約100種類もの酵素が生み出されます。デンプンを分解して糖を生成するアミラーゼや、タンパク質を分解してアミノ酸を生成するプロテアーゼなどの酵素によって様々な栄養素が作りだされています。

    発酵に関わる酵素とは?
  • 発酵食品

    日本の食卓に欠かせない「発酵食品」。味噌や漬物、日本酒、キムチ、納豆、チーズ、ヨーグルトなど、私たちの身の回りに発酵食品はたくさんあります。そのルーツは、ヨーロッパや日本など様々ですが、共通しているのは、微生物のはたらきが関係しているということ。近年では、ヨーグルトやキムチなど生きた善玉菌が含まれる「プロバイオティクス食品」を食べて腸内環境を整える「腸活」にも注目が高まっています。

    発酵食品

食品以外にも!
こんなところに発酵のチカラ

微生物による発酵のチカラは人間にとって有益な食品をつくりだすだけでなく、
医療分野や環境分野など幅広い分野で応用されています。

  • 藍染

    「青は藍より出でて藍より青し」ということわざがあるように、植物の藍よりも藍染の色はさらに青く、「天然灰汁発酵建て」という発酵の技法を経て作られます。藍染の原料であるタデアイなどの葉には、藍還元菌が寄生しており、アルカリ性の環境に整えることで菌が活性化します。活性化した菌の酵素が不溶性の藍を水溶性に変化させることで、はじめて染色が可能になります。
    また藍には、古くから止血や消臭効果、抗菌作用があることが知られていました。鎌倉時代には、「勝色」(藍染の中で一番濃い色)は、大変縁起がいいものとされ、武具や着物に藍染が多用されました。現在でも、柔道着や剣道着などには勝色が使用されています。

    藍染

    藍染が出来るまで

    (1)タデアイなどの原料を採取

    (2)すくもを作る 原料をほうきなどで何度も裏返しながら天日干しで乾燥。大きなむしろや俵に詰めて寝かし込む。 その後、積み上げたむしろなどに水を打ち混ぜ、切り返しを行います。 何度も繰り返すうちに微生物が自然に発酵を始め70℃ほどに温度が上がります。このような作業を100日ほどかけて発酵させると「すくも」が完成します。

    (3)藍玉を作る

    (4)藍玉に灰汁液体やふすまを加え、菌を活性化させる

    (5)染色する

    (6)乾燥させて、酸化させる(酸化させることで不溶性の性質に変化する)

    医薬品
  • 医薬品

    微生物のはたらきは、消化剤などの医薬品にも活用されています。1895年、科学者の高峰譲吉は、小麦ふすまに麹カビを植え付け、ふすま麹から「タカジアスターゼ」という消化酵素を開発しました。「タカジアスターゼ」の他にも、リパーゼなどの消化酵素が胃腸にはたらき消化吸収を助ける消化剤として使用されています。

    医薬品

発酵にかかわる微生物

発酵食品にかかわる微生物は、主にカビ、酵母、細菌の3種類に分けられます。
発酵食品の中には、複数の微生物のはたらきによってつくられるものもあります。
微生物の驚くべきチカラをぜひ知ってください。

  • カビ

    カビを活用して作られる発酵食品には、甘酒、味噌、チーズ、鰹節などがあります。
    カビの中でも、特に代表的なものは「コウジカビ」、別名麹菌です。麹菌は麹をつくるために使用されるカビの総称で、日本の国菌にも指定されています。甘酒や味噌、醤油や日本酒など作る際に活用され、日本の発酵食品には欠かすことができない微生物です。
    麹菌の他に、鰹節に活用される「カツオブシカビ」、ブルーチーズに活用される「アオカビ」などがあります。

    酵母
  • 酵母

    酵母を活用して作られる発酵食品は、パン、ワイン、ビール、醤油などがあります。
    酵母菌は、自然界の至るところに生息する微生物で、アルコールと二酸化炭素をつくりだすアルコール発酵をおこないます。ビールやワインなどの酒類の醸造やパンづくりで特に活用され、パン特有の「良い香り」は、酵母菌が発酵する過程で香気成分を生み出すことで生まれます。
    酵母は、日本酒に活用される「清酒酵母」、醤油に活用される「醤油酵母」、パンに活用される「パン酵母(イースト)」などがあります。

    細菌
  • 細菌

    細菌

    細菌を活用して作られる発酵食品には、キムチ、納豆、糠漬、ヨーグルト、酢などがあります。
    細菌の中で特に代表的なのが「乳酸菌」「酢酸菌」「納豆菌」です。乳酸菌は、キムチや糠漬、ヨーグルトなどに活用されます。乳酸菌がはたらく食品は、酸味があることが特徴ですが、これは乳酸菌によって乳酸が生成されるためです。この乳酸には、酸性の腐敗しにくい環境を整え、食品の保存性を高める良い効果もあります。
    酢酸菌は、酢やナタデココづくりに活用されます。
    どちらも酢酸菌が活用されますが、お酒を酢酸発酵させ
    て作られるのは酢だけです。
    納豆菌は、名前の通り納豆に活用されます。納豆菌は、熱や酸に強く100度に熱しても死滅せず、生きたまま腸に届くとても生命力の強い細菌です。また、納豆菌が増殖する過程で作られるナットウキナーゼという酵素には血栓を溶かす作用があり、血栓溶解剤としても活用されています。

出典・参考文献

山梨県厚生連『発酵食品ってすごい!』/パイ インターナショナル『発酵はおいしい!』/ユーキャン『伝統的な和食と日本の発酵文化』『世界に広がる発酵食品と健康』/ 製薬協『くすり研究所』/ 名古屋学芸大学 管理栄養学部 『お酒ができる仕組みの解明と、生化学の発展』/ 野川染織工業株式会社 取材協力

出典・参考文献

  • 山梨県厚生連『発酵食品ってすごい!』
  • パイ インターナショナル『発酵はおいしい!』
  • ユーキャン『伝統的な和食と日本の発酵文化』『世界に広がる発酵食品と健康』
  • 製薬協『くすり研究所』
  • 名古屋学芸大学 管理栄養学部 『お酒ができる仕組みの解明と、生化学の発展』
  • 野川染織工業株式会社 取材協力