近年まで、ニンジンの実の表面(以下、分かりやすく“皮”と書きます)は内側よりもβ-カロテンが豊富だと考えられてきました。
これは、文部科学省が調査・公表した「五訂増補日本食品標準成分表(2005)」の中で、"皮"無しニンジンより"皮"付きニンジンの方がカロテン量が多かったことから広まった話です。
つまり「ニンジンの実の部分は同じはずだから、きっと“皮”にカロテンが多いのだろう」と考えられたのです。
そのため、一時期「"皮"には栄養がたっぷりあるから、捨ててはいけない!」というブームがありました。
しかし、「日本食品標準成分表 2015年版(七訂)」では、ニンジンの"皮"だけも調査され「"皮"も実も大差ない」ことがわかりました。
さらに、本書には以下のような注意書きもあります。
分析に用いた試料についても、それぞれの時点において一般に入手できるものを選定しているため、同一のものではなく、品種等の違いもある。このため、食品名が同一であっても、各版の間における成分値の比較は適当ではないことがある。
日本食品標準成分表2015年版(七訂)第一章 説明
つまり、試料による差が大きく、部位による違いは明確ではなかったということです。
ニンジンから栄養をしっかり摂りたいのなら、"皮"の有る無しよりも、ニンジン自体の質に目を向けた方が良さそうですね。
このように“皮”は栄養的に必ず食べた方が良い!…というほどではないようです。
ただ、野菜加工に携わる者としては、やはり食べられる部分がゴミになってしまうのは悲しいことです。できれば“皮”をむかずに、かつ、美味しく食べてもらえたら…と思ってしまいます。
そこで、最後にニンジンの“皮”のためのレシピをいくつかご紹介します!